▼江戸川乱歩(エドガワランポ)
1894年三重県に生まれる。1923年雑誌「新青年」に「二銭銅貨」を発表して作家に1947年に日本推理作家協会の前身、探偵作家クラブの初代会長となる。1954年には江戸川乱歩賞を設けた。代表作に「孤島の鬼」、「パノラマ島奇談」、「陰獣」、「押絵と旅する男」等。
1894年三重県に生まれる。1923年雑誌「新青年」に「二銭銅貨」を発表して作家に1947年に日本推理作家協会の前身、探偵作家クラブの初代会長となる。1954年には江戸川乱歩賞を設けた。代表作に「孤島の鬼」、「パノラマ島奇談」、「陰獣」、「押絵と旅する男」等。
“乱歩入門書”と云えるぐらい名作短編粒揃いである。それだけに他で乱歩作品を集めようと思っている人には効率面から云えば強くは推しません。が“乱歩作品を読みたいけど面白さを知るには何から手ぇ付けりゃイイのよ?”という人にはオススメです。ミステリ的要素が強い「二銭銅貨」、「二廢人」、「D坂の殺人事件」、「心理試験」、「屋根裏の散歩者」、怪奇趣味の「赤い部屋」、「人間椅子」、「鏡地獄」、「芋虫」…本編はページ数にして300に満たないのですが、そのひとつひとつの世界観は強烈で濃い。
ハッキリ云ってナメて掛かってました。“古いし大した事無いでしょ、どーせ”と。ところがところが「二銭銅貨」は暗号トリックでドンデン返しに継ぐドンデン返し。“短編でよくココまで詰め込んだなぁ”と感心してしまいました。「屋根裏の散歩者」は、ただの倒錯者の心理を描いただけかと思ったら結末で論理がしっかりしている事を知らされる。上記、個人的にミステリ的要素が強いと挙げた作品は伏線の妙、巧さが感じられる。
《2004/08/13掲載》
[備考・余談]
- 「二銭銅貨」、「二廢人」、「D坂の殺人事件」、「心理試験」、「赤い部屋」、「屋根裏の散歩者」、「人間椅子」、「鏡地獄」、「芋虫」の9編収録。
- 解説・荒正人。
夢想の美…これに尽きる。現実の中にある幻想を巧く描き出しているから凄いんだな。
荒唐無稽のようで“ないか”と云われれば“ある”世界。
画の浮かぶ作品ばかりだ。文章介して見るそれは一種の幻視と読んでもいいだろう。それを与えるという事は凄い力だと思う。
さて…それはそれとしてミステリとして読む。本作はデビュー作の「二銭銅貨」から晩年の作品までズラッと収録されている。俯瞰して見ると「二銭銅貨」や「心理試験」、「屋根裏の散歩者」辺りの初期短編が濃密でありながら軽快、そして強烈なだけに後半に行くに従って、そういった探偵趣味が薄れて行く感じは否めない(まぁ夢想世界が凄いから、どっちゃでもエエわい、って感じなんですどね)。ミステリというより犯罪小説が多い。
個人的には既読の「江戸川乱歩傑作選」と被っている作品が多かったが、それに収録されてない作品のそれぞれに発見があった。発見…面白いのは面白いけど、乱歩の本3冊目にして漸く、よく巷で云われる通俗長編の不人気が解かったような気がする。乱歩世界は導入部が、この上なく突飛な視点でありながらリアルさを保っている特異さが特徴。それだけで充分、面白くて濃いから導入部で与える衝撃を保つには長編は向かない気がした。短編でスパッと鮮やかに切り取った作品…矢張り「二銭銅貨」、「心理試験」、「屋根裏の散歩者」だなぁ。
惜しむらくは、これだけの秀逸短編を揃えながら「D坂の殺人事件」が収録されていないことだろうか(特にある意味メタ趣向の「陰獣」が収録されている事を踏まえると)。
《2005/09/02掲載》
[備考・余談]
- 「二銭銅貨」、「心理試験」、「屋根裏の散歩者」、「人間椅子」、「鏡地獄」、「パノラマ島奇談」、「陰獣」、「芋虫」、「押絵と旅する男」、「目羅博士」、「化人幻戯」、「堀越捜査一課長殿」の12編収録。
- 解説――乱歩変化・中井英夫。
- 江戸川乱歩年譜・中島河太郎編。
- 自註自解・江戸川乱歩。
- 「二銭銅貨」を読む・小酒井不木。
- 編集鼎談 初めに乱歩ありき・中島河太郎、北村薫、戸川安宣。
――密室状態での恋人の死に始まり、その調査を依頼した素人探偵まで衆人環視のもとで殺された蓑浦は彼に不思議な友情を捧げる親友諸戸とともに事件の真相を追って南紀の孤島へ向かうことになった。だが、そこで二人を待っていたのは言語に絶する地獄図の世界であった…!パノラマ島奇談」や「陰獣」と並ぶ江戸川乱歩の長編代表作(創元推理文庫・裏表紙より)――
前半は内容紹介にある密室殺人、衆人環境殺人と本格ミステリな内容。中盤から後半にかけては前半の物語を引き継いで…といってもミステリ的には前半で凡その解決をみるので後半は事件の背景を探る冒険小説に転じホラー、サスペンス色強くする。ページを捲るのが恐ろしくもあり、その衝動が止められない引き込まれる作品でした。
密室殺人、衆人監視下の殺人はミステリ的期待からすればスッキリしないモノがあるかもしれない。でもそれ――厳格なミステリ・コード遵守や万人が納得する解決――が本作にとって絶対的に必要とは思わない。全体的な面白さから見れば微々たるモノである。細々とした事、1つ1つの事象に拘るよりも、とにかく最後の最後には落としてくれるので、そういった意味での伏線は効いている。
思わせ振りな(だが厭味の無い)書き出しが最後の最後に結び付いた時、ハタと膝を打ってしまう。乱歩の醍醐味が詰まっている。
《2004/08/26掲載》
[備考・余談]
- 解説・中井英夫。
- 初出時の竹中英太郎の挿絵全点併載。