【ペンギンって飼える?】

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私はぺんぎん事務所のHPとブログを運営していて、今まで何件かの質問やコメントを頂きました。
その中で一番多かったのが、「ペンギンって飼ってもいいんですか?」とか「ペンギンを飼ってる家を見たことあります」、あるいは「ペンギンを飼いたい!」というもの。

そこで!ぺんぎん事務所が総力を結集して調べてみました。
ペンギンって飼える?それとも飼えない?


まず、簡潔に結論から申し上げます!


【法的な問題】

法的には、「どのような種類のペンギンか」、そして「保護・捕獲した場所はどこか」が問題になります。
それによって、ペットとして飼うことが合法になったり、違法になったりします。
キングペンギンやエンペラーペンギンの場合、日本で個人的にペットとして飼うことについて、実は【法的に問題ありません】。
ちなみに、「はじめからペットとすることを目的としてペンギンを捕獲した場合」と、「傷ついたペンギンを可哀想に思い生息地で保護し、日本に連れてきてペットとして飼うこと」に、法的には大きな差異はありません。
ただし、はじめからペットにするための営利目的で南極地域の生物を捕獲することは南極条約(下の解説参照)の精神に反するため、保護して日本に連れ帰った場合よりも罰せられる可能性は高くなります。


【実現可能性の問題】

残念ですが、「ほとんどの人は無理」です。
ですから、基本的に「ペンギンは個人のペットになり得ない」動物なのです。
これが、「ペンギンって飼える?」という問いに対する一番簡単な答えです。
詳しくは下の解説を参照して頂きたいのですが、なぜペンギンを飼うのが無理かというと、ペンギンを飼育するためには、莫大な財力と、本格的な設備と、根気と、手間と、知識と、愛情が必要だからです。
日本人はもともとペンギン好きな民族ですし、2005年8月には映画『皇帝ペンギン』が上映され、ペンギンに対する注目度が高まっています。
でも、ペンギンは犬や猫と違い、「ペンギンってカワイイ!私も飼いたい!」と言って飼えるような動物ではありません。
この解説を作ったのも、「ペンギンは本来野生動物であり、一般人が飼えるような鳥ではありませんよ」ということを知って頂きたい、という思いがあったからです。

次に、細部の解説にうつります。これからちょっと専門的なことを書かなくてはなりません。
まず上の結論で申し上げた、法的なことについての解説をさせて頂きます。
長いです。(^_^;)


<どのような種類のペンギンが規制されるか>

【ワシントン条約】

絶滅のおそれのある動植物の保護と国際取引を規制するための条約。1972年の国連人間環境会議勧告に基づき、1973年にこの条約が採択されました。
同条約では、野生動植物の国際取引の規制を輸出国と輸入国とが協力して実施することにより、採取・捕獲を抑制して絶滅のおそれのある野生動植物の保護をはかることを目的としています。
取り引きの規制を受ける動植物は絶滅のおそれの度合いに従い附属書T〜Vに分けて記載されています。なお、附属書Tの種については、この条約では、ペットや観賞用の生きた動植物はもちろんのこと、はく製等も規制対象となっています。
ペンギン類の中ではフンボルトペンギンが附属書Tに、ケープペンギンが附属書Uに記載されています。

附属書に記載された種を輸出する際は、「事前に発給を受けた輸出許可証を提出することを必要とする」(第3条2項、第4条2項、第5条2項)
この輸出許可証が発給される要件は、附属書ごとに異なります。(もちろん絶滅危険度の高い方が許可証の発行要件が厳しい)
よって附属書に記載された種は、原則としてペットとしての輸出入は禁止されています。
また附属書に載っている種ならば、傷ついたペンギンを保護して日本に持ち帰るのも、輸出許可証がないから当然違法行為です。

→ フンボルト、ケープペンギンは、輸出許可証がない限り、日本に持ち帰り、ペットとして飼うのは違法。


【IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト】

国際条約ではありませんが、IUCNという組織が、野生動物の絶滅危険性を示す指標を公開しています。
これを一般に「レッドリスト」と言い、次に挙げるカテゴリーから順に、絶滅の危険度が高いことを示しています。
・絶滅危惧種
 シュレーターペンギン
 キガシラペンギン
 ガラパゴスペンギン
・危急種
 イワトビペンギン
 マカロニペンギン
 フィヨルドランドペンギン
 スネアーズペンギン
 ロイヤルペンギン
 ケープペンギン
 フンボルトペンギン
・準危急種
 ジェンツーペンギン
 マゼランペンギン
→ レッドリストは厳密には法的な問題ではなく、むしろ倫理的な側面が強いものです。
  ですから、レッドリストに違反しても、法的な罰則や制裁があるわけではありません。
しかしこれらのペンギンについては、ペットとしての捕獲や、保護して日本に持ち帰るのは避けるべきだと考えられています。
  (傷ついたペンギンを現地で手当てし、現地でリリースするのは問題なし。ただし手当てはある程度鳥類の知識を持つ者が行うのが望ましい。)



<保護・捕獲した場所によりどのような規制があるか

【環境保護に関する南極条約議定書】

この議定書は、南極条約の強化、補足のために採択されたものです。
南極で活動する場合の生態系、環境に関するガイドラインが定められています。
まず、「南極の環境並びにこれに依存し及び関連する生態系を包括的に保護することを約束」します。(第2条)
そして南極の活動は、「動物及び植物の種又は種の個体群の分布、豊度又は生産性の有害な変化」、「絶滅のおそれがありもしくは脅威にさらされている種又はこのような種の個体群を更に危険な状態にすること」を回避するように計画し及び実施する。(第3条2項 (a) (4),(5))
適用範囲:南緯60度以南の地域 (南極条約第6条)

下のリンク先の上から2番目の地図をご覧下さい。南緯60度は、南極大陸のすぐ外側を囲んでいる白い円です。
http://www.kyoto-seika.ac.jp/tanter/2001_kkk/lec7.htm
よって、この内側に住むペンギン(エンペラー、アデリーペンギン)、(一部のヒゲ、ジェンツー、マカロニペンギン)は、捕獲された場所が南緯60度以南なら保護の対象になります。


【南極海洋生物資源保存条約】

「この条約の目的は、南極の海洋生物資源を保存するところにある」(第2条1項)
「採捕の対象になる資源について、その量が当該資源の安定した加入を確保する水準を下回ることとなることを防ぐこと」(第2条3項(a))
適用範囲:南緯60度以南及び、南極収束線と南緯60度の間
http://www.kyoto-seika.ac.jp/tanter/2001_kkk/lec7.htm
(南極収束線とは、上のリンク2番目の地図で、南極のかなり外側にある青い範囲です。気候状況により範囲は変化します)

この「南極収束線内」という範囲は相当広く、温帯ペンギン以外のほとんどのペンギンが範囲内に含まれます。



<どのような種類のペンギンか>

ワシントン条約の解説にある通り、生息地から連れて帰ったり、ペットとして購入して国際法的に問題があるのは、ケープペンギンとフンボルトペンギンだけです。

その他の種のペンギンは、少なくとも国際法上は規制されていません。
例えばキングペンギンは生息個体数が多い安定種であり、ワシントン条約、IUCN共に規制の対象外です。

よって、この例でいえばキングペンギンを1羽連れて帰ったとしても、少なくともワシントン条約や、IUCN上は、問題ないのです。

ただし、生息地が南極のような無主地でなくてどこかの国家である場合、例えばアルゼンチンにはキングペンギンが生息していますが、アルゼンチン政府が「キングペンギンの捕獲、輸出を禁ずる」趣旨の国内法を定めていれば、上記のような行為は当然法的に違法です。
(各国の規制状況は膨大な調査が必要なため、まだ調べていません。ご了承下さい。)

しかし、IUCNで危急種であるスネアーズペンギンの繁殖地であるスネアーズ島には、ニュージーランド政府により特別に許可された調査・研究以外上陸すら禁止されている等、各国とも国内法による一定の保護政策を行っているようです。

ということは、南極以外に住むペンギンの生息地は、いずれかの国に属しているので、その国の国内法で規制されている可能性があるわけです。

このような法律に違反した場合、ペンギンが生息していた国(上の例ならアルゼンチン)の法律により罰せられます。

ただ、ペンギンが生息しているところは、警察どころか住人さえいない絶海の孤島が少なくないため、法の実効性という面で疑問があることは確かです。

ちなみに、私は日本のペットショップでケープペンギンが70万円で取引されているのをTVで見たことがありますが、これはおそらくワシントン条約違反の違法行為だと思います。輸出許可証なんて簡単に発行されないですので。
(この場合ペットショップには科料または行政処分等が課せられる可能性が大です。)

ただ、「ワシントン条約の附属書に記載される前に捕獲していた」場合は、同条約は遡及(過去の事象にさかのぼって法的効果を及ぼすこと)しないので法的には飼っても合法です。



<保護・捕獲した場所はどこか>

まず、「環境保護に関する南極条約議定書」は、エンペラー、アデリー、一部のヒゲ、ジェンツー、マカロニペンギンが規制対象です。

この議定書の適用範囲が比較的狭いのは、各国の国内法では規制できずに、法の欠缺(空白状態)が生じる南極のみに一定のルールを設けることに、目的があるからです。

逆に言えば、ペンギンの保護は国際条約ではなくて、ペンギン生息地が属するそれぞれの国が行うべき、というのが現在の潮流であるといえます。

次に「南極海洋生物資源保存条約」では、南極収束線内に多くのペンギンの生息地が入るため、比較的広範に条約が適用されます。

しかし、両条約とも生物保護で想定している禁止事項は、例えば魚類の大量乱獲等による生態系の崩壊防止であるため、ペンギン1羽を捕獲したことで、直ちに国際法違反に問えるかと言えば、それは難しいと思います。

したがって、最終的には生息地の国内法によって規制されるということになります。

このように考えると、南極圏に生息するエンペラー、アデリー、ジェンツー、ヒゲの4種のペンギンは、ペンギンの種による保護も、生息地を管轄する政府による法の保護も、共に受けていないことになるのです。

ただし、南極に旅行に行った人の話では、南極条約の精神から、南極圏には「一切のモノを持ち込まない」、南極圏から「一切のモノを持ち帰らない」ことを、参加者に厳しく課すツアーもあるそうです。

ここで問題なのは、これらの4種は南極圏に住むペンギンのため、飼育が非常に困難です。上野動物園ですら、このうち3種(エンペラー、アデリー、ヒゲ)を初めて飼育したときはすぐに死なせてしまったほどです。

ここで指摘できるのは、「法により保護されやすい亜寒帯、温帯ペンギン(フンボルトなど)の方が飼育は簡単」、「法によって保護されていない南極付近のペンギンの方が、飼うのが難しい」という一種の矛盾です。

今後ペンギンが爆発的ブームになり、ペットとしての需要が高まった場合、「合法だけど飼いにくい」南極ペンギンがペットショップに並ばないことを祈るばかりです。でも多分、売れる前にペットショップで、あるいは輸送中に死んでしまうケースが多いでしょうから、採算が合わず、そういう「ビジネス」は成立しないと思いますが。

結果として、おそらく注目されるのが、キングペンギン。キングペンギンは、映画『皇帝ペンギン』の主役であるコウテイペンギン(エンペラーペンギン)によく似ていますし、模様も綺麗です。南極ペンギンよりは飼いやすいし、性格もおっとりしていて攻撃的でない。しかも国際条約上、取引が合法です。

根本的にキングペンギンがペットとして売られるのを防ぐためには、われわれ消費者が「需要を作らないこと」が一番なのかもしれません。

ちなみに、コガタペンギン、ハネジロペンギンも、国際法上取引可能で、しかも飼育しやすいペンギンですが、あまり可愛くないので日本人うけはしないと思われます。
(^_^;)

さらにこの2種は、生息地であるオーストラリアでは保護活動がなされているので、国外への持ち込みはできないと思われます。



<日本の国内上の問題>

生息地、すなわち外国で保護したペンギンを日本国内に持ち込むときには検疫を受けなければなりません。(生き物ですから)
しかし漁船がペンギンを検疫にかけるとは思えないので、まずその点で問題が生じます。

また自治体によっては、ペンギンなどの特殊な動物を飼うのに許可が必要なところがあるかも知れません。
(多くは危険動物が許可制度の対象なのですが。)



<ペンギンは日本の一般家庭に飼われて幸せか?>

私は自他共に認めるペンギンマニアです。(^^;) ペンギンは大好きです。
でも私はペンギンを飼おうとは決して思いませんし、日本の個人が家庭でペンギンを飼うことには反対します。
なぜかというと、ペンギンのことを知れば知るほど、彼らは日本人の家庭のペットになることができないことが分かります。

ペンギンを飼うのには、莫大な財力と専門的な知識、施設、そして特別な配慮が必要です。

具体的には、少なくとも以下の条件を整備し、我慢し、あるいは守ることが飼い主に課される義務になると思われます。

・無菌状態が保てる冷房室
・運動とストレス解消のためのプール
・清潔さを保つための排水装置等
・毎日大量に食べる新鮮な魚
・換羽期や子育て期の飼育法
・病気にかかったときの基本的知識と対処
・ところかまわずしてしまうフンの掃除
・独特の強烈なペンギン臭
・鳴き声による騒音

…日本の一般的な家庭で、これらの条件をクリアすることが果たして出来るでしょうか。
おそらくほとんどの家庭では出来ないのではないかと思います。

また本来群れて集団で生活するペンギンを1羽のみで飼うことにも、問題があります。
ペンギンは我々の住宅環境とまったくかけ離れたところに住む、ペットにするにはあまりにも手に余る生き物なのです。

よって、最初は珍しがっていた飼い主も、次第に閉口してペンギンを手放そうとするでしょう。

地球の裏から日本に勝手に連れてこられて、生きていけない北半球で、飼い主の都合で勝手に捨てられる…。
こんな行為がペンギンにとって幸せと言えるでしょうか?
ペンギンを飼いたいと思う人は、この可能性に対して納得のいく答えを持つ人でなければならないはずです。

ペットとして飼うためには、その動物のよいところと悪いところ、両方知らなければいけないのです。

ペンギンを飼おうとする場合、種類によっては、日本まで連れてきても昨日までに見てきたように国際法的には問題ないのかもしれませんが、生息地の国内法により違法である場合が多くあります。

ちなみに「合法で比較的飼いやすい」キングペンギンは、一羽200万円。一般人でも頑張れば買える金額。

では、お金さえ払えばどんな動物でもペットにしていいのでしょうか。

ペットを購入する時、我々はモノではなくペットの人生や命そのものを買っているのです。
飼い主として、その人生や命に十分な責任をもてないと思うのであれば、買うのを控えるべきでしょう。

合法であれば、お金があれば、世の中何をやってもよいとは思いません。
ペンギンをペットとして飼うことは、法律やお金ではなく、むしろ動物愛護の精神から問題があるのではないかと思います。



<連れてきたペンギンをどうすればよいか>

私は、動物園か水族館に預けるべきだと思います。
その方がペンギンにとっては間違いなく幸せです。

しかし、私のHPのアンケートの結果、「動物園や水族館の環境は、ペンギンにとって基本的に問題ないが、野生状態に比べれば、場合によっては十分でない」という意見すら、あるのです。
(当HP「ペンギンマナー講座」参照)

動物園や水族館でさえ、必ずしも100%万全な環境ではないのだから、家庭などでペンギンにとって住みよい環境を提供するのは、さらに至難の業でしょう。

特にエンペラーペンギンやアデリーペンギンなどの南極ペンギンは、水族館ですら手に余るため、ほとんどの水族館では飼育していません。

でもその反面、実際に動物園や水族館で大切に飼育されたペンギンは、野生種よりもはるかに長生きするものも多く、きちんとした管理の元で飼われれば、彼らも幸せな人生(ペン生!?)を全うできると思います。

ペンギンにとっての本当の幸せがどういうものかは人間には分かりませんが、少なくとも私達は彼らを不幸にしない努力をすることはできます。

ペンギンをペットとして飼わない、飼おうとしないことは、その努力の中の大事な1つになると、思います。

最後に、今までの論の要旨をまとめた結論を書いて、この連載を終わりたいと思います。

長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
 m(_ _)m (^^)/~~~



【最終的結論】

・ペンギンを日本の家庭でペットとして飼うことは、国際法的には問題ない場合が多い。ただし生息地の国内法上問題がある可能性は大いにあり得る。

・しかし実際には、例え合法であっても、日本の家庭では飼育のための十分な環境を用意できないため、飼うべきではない。

・このことを知った上で、ペンギンがブームになっても、私たちが飼おうとしなければ(つまり、需要を作らなければ)、ペンギンが密輸されたり売られたりすることもない。

・もし遠洋漁船などが故意又は過失によりペンギンを連れてきてしまったら、家庭で飼わずに動物園か水族館に連絡して、引き取ってもらうべき。

・ペンギンと会いたくなったら、動物園や水族館で思う存分「ペンギンとの遭遇」を楽しみましょう。 (^-^)
 (その際は、当HP「ペンギンマナー講座」を是非ご参考に!)