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     心に残る作品


*ある日次のような内容のメールが届きました。

 「お母様が編まれたシルクのセーターについているモチーフを、新たに黒のシルクで編んだ大判のストールにつけてもらえないか」と、いうものでした。

*メールだけでは、詳しい事が分からないので直接お電話でお話を伺いました。

*伺って私の頭の中に何となくイメージ出来たので、イラスト付でそのセーターを送って頂くことにしました。

*送られてきたセーターは、ひと針ひと針丁寧に編まれ、モチーフは前身ごろ・そして肩から袖にかけて散りばめられており、モチーフとモチーフをつなぐように刺繍がされお母様の愛情が伝わってくる作品でした。

*何故か一番小さな一段のモチーフも使わなくてはいけないと思いはずしていきました。

*ストールを編み上げてさあモチーフをどのように配置しようかと。モチーフで流れを出したいと色々試していると、5枚のモチーフで梅の花の様な新たなモチーフに生まれ変わりました。そして本体のピンクの糸で同じように編み背中中央に配置する事に。


生まれ変わったモチーフ
中央の花の芯が一段のモチーフ
本体のピンクのシルクで同じように


*在庫の糸でモチーフを少し増やし、取り外した沢山のモチーフと共に大きな流れを作って行きました。

全体


*どちらが上になってもいいようにほぼ左右対称になっています。

後ろ


*完成したもののメールや電話、イラストだけのやり取り。気に入ってくださるかとても不安でした。
しかし最初メールを貰わなければ私の編み物人生で出会うことの無い作品でした。作品は手元から無くなります。
形だけでも残しておきたくホームページに載せたい、そしてこのセーターの思い出も一緒に載せたいと。こちらから一方的にお願いをしました。


*お返事をいただきました。



 母が亡くなるまでの3年間、私の家族と暮らしました。
 母は高血圧で常に薬とお医者さんをかかさずに生活を送っていました。
 最後は独りで亡くなるのだろう・・・・とお互いに思っていました。
 現実は私の娘がお友達に夏休み会いたい!という事がきっかけで母に娘を2週間、一緒に過ごす事を連絡入れたことがきっかけで、癌が発見されました。
 癌と宣告をされて、治療を受けなければ半年から1年が余命であろうと・・・・。 直ぐに、母と娘に、簡単な荷物をトランクにまとめて、我が家に来るように話・・・・
 それから、亡くなるまで3年間東京で過ごしました。
 母は癌になって幸せ!とよく話していました。
 そうでなければ、娘や孫たちと一緒に暮らすことはなかった・・・・これが、本当に幸せで、
 こんな幸せを頂いて良いのであろうかと、人に話していました。

 私は、母の作品を見るたびに、自宅ソファーの前で、老眼鏡をかけながら、話をしながら編み物をしている、母の姿を思い出します。
 本当に編み物が好きで、1年中編んでいたと思います。
 独り暮らしも編み物があるから寂しくは無い・・・と言っていたほどでした。

 最後の作品はホスピスの担当医に送ったシルクのマフラーでした。
 もう編み目がなかなか思うように揃わずに、何度もほどいては編んでいました。
 ベッドの上でも、老眼鏡をかけて編んでいました。
 母が命を引き取り最後ホスピスから出てくる時に担当医はマフラーをして私達家族と母を見送ってくれました。

 色々なことが思い出となっています。こうして、ストールに形を変えて、私の側に居てくれると思っています。
 本当にありがとうございました。

                                         平成21年7月28日
                                            多加子


よみがえった母

 先日、引越しを機に衣類の整理中、亡き母の手編みの作品が出てきました。
 数ある作品の中で、娘が小学校入学式の為に編んでくれたピンク地シルク糸で花のモチーフを全面にあしらったスーツが出てきました。
 少し染みが数箇所あり、クリーニングとも思い考えていました。
 引越しの時期が2月という季節で、私は、ウールの大判ストールをよく利用していました。
 そこで、頭に閃いたのが、このセーターの母のモチーフを、何とかシルク地のストールに散りばめられないであろうか・・・・という事でした。

 私のイメージを下手な図案に書き母のセーターと一緒に送りました。
 出来上がったストールの箱を開ける瞬間、子供のような、とても楽しみにしていた プレゼントを見る気持ちでありました。

目にした瞬間、母がいつも編み物をしている姿を思い出しました。
 母のモチーフとMさんのモチーフが入り混じり、流れを作り、厳かで、美しく、そしてシルクの光沢が何とも言えぬ上品さを表し、満足でした。
 ソファーの背もたれに何気なく掛けてあったストールを、帰宅した娘が見て・・・   ”お母さん、とても素敵なストールにおばあちゃんのお花が栄えて綺麗!宝物ね!    シルクってこんなに綺麗なんだね・・・” と、言いました。

 ”世界に一つのストール”で母がよみがえって来ました。
 母の色が損なわれる事無く、それ以上に綺麗にして頂き、感謝の気持ちです。

 ありがとうございました。
                                         平成21年7月28日
                                             多加子




 *私はこのお返事を読み”私こそありがとうございました。”と言う気持ちでした。一生忘れられない作品です。

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